電話勧誘販売の解釈に関するQ&A

法第2条第3項、施行令第2条第1号関係:「政令で定める方法により電話をかけさせ」

Q1テレビで拡大鏡のCMを見て、良さそうだと思い、CMで申込先とされていた電話番号に電話をかけました。その際、オペレーターの方から、拡大鏡が必要なお客様には、併せて目に良いサプリメントも購入してはどうかと勧められ、拡大鏡と併せてサプリメントも購入しました。しかし、サプリメントについてはCMで何も触れられておらず、よく考えると不要と思い、サプリメントについてクーリング・オフしたいのですが、私自身が事業者に電話をかけた際にサプリメントを購入していることから、電話勧誘販売には該当しないため、クーリング・オフすることはできないのでしょうか。
A1 特定商取引法は、消費者が事業者に電話をかけた場合であっても、事業者が政令で定める方法により消費者に電話をかけさせたといえるのであれば、電話勧誘販売に該当すると規定しています(特定商取引法第2条第3項)。この規定は、事業者からの巧みな働きかけにより消費者が電話をかけさせられた場合、消費者が自発的に購入意思を形成した上で電話をかけているとはいい難く、電話をかけた段階では予期していない勧誘を不意打ち的に受けるという意味においては、事業者が電話をかけて勧誘した場合 と差はないため、電話勧誘販売の対象に含めることが適当と考えられることを趣旨とするものです。
政令で定める方法として、特定商取引法施行令第2条第1号は「電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは電磁的方法により、若しくはビラ若しくはパンフレットを配布し、又は広告を新聞、雑誌その他の刊行物に掲載し、若しくはラジオ放送、テレビジョン放送若しくはウェブページ等を利用して、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけることを要請すること。」と規定しています。なお、電磁的方法とは、SMS(ショートメッセージサービス)、電子メール、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のメッセージ等を指し、ウェブページ等とは単一のウェブページ及びその集合物であるウェブサイトを指します(文字だけでなく、静止画像、映像、音声も含まれます。)。
設問の事例において、消費者はテレビで拡大鏡のCMを見て事業者に電話をかけているものの、サプリメントについてはCMで何も触れられていないことから、テレビを利用して、サプリメントの売買契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけることを要請したといえる のであれば 、特定商取引法施行令第2条第1号に定める方法により電話をかけさせたといえ、電話でのオペレーターからの勧誘によりサプリメントを購入したといえる場合、電話勧誘販売に該当し、クーリング・オフの規定が適用されると考えられます。
なお、下線部分は令和5年6月1日に施行されます(次のQにおいても同じ。)。

法第26条第7項第1号、施行令第9条関係:「売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結するために電話をかけることを請求した者」

Q2先日、情報商材を購入したのですが、結果が出なかったため、SNSのメッセージ機能を使って事業者に連絡したところ、何度かSNSでメッセージのやり取りをした後、事業者が相談に乗るということで、WEB会議ツールを用いたオンラインミーティングをお願いすることにしました。指定されたURLにアクセスすると、事業者から、最初は、私が購入した情報商材の使い方などの説明をされたのですが、途中から、別の情報商材を購入すればより結果が出やすいという説明をされ、その情報商材を購入してしまいました。その情報商材でも同じように結果が出なかったので、クーリング・オフしたいのですが、電話ではなくWEB会議ツールにより勧誘を受けて購入しているため、電話勧誘販売には該当せず、クーリング・オフすることはできないのでしょうか。また、仮にWEB会議ツールによる勧誘が電話勧誘行為に該当するとしても、私自身が事業者に電話をかけることを要請しているため、電話勧誘販売の規制が適用されなくなり、クーリング・オフすることができないのでしょうか。
A2 特定商取引法第2条第3項に規定する「電話をかけ」とは、電話により通話状態に入ろうとすることをいい、インターネット回線を使って通話する形式(映像を伴う場合も含みます。)を用いた場合であっても「電話」に該当するとされています。設問の事例で用いられているWEB会議ツールは、インターネット回線を使って通話する形式であるため、事業者がURLを送った場合「電話をかけ」に該当します。
また、特定商取引法第26条第7項第1号の規定による適用除外について、同号の「電話をかけることを請求した者」とは、契約内容の詳細が確定していることは不要ですが、契約の申込み又は締結をする意思をあらかじめ有し、当該契約の申込み又は締結を行うために電話をかけることについて明確な意思表示をした者を意味します。設問の事例のような場合、通常、消費者が事業者に電話をかけることを依頼した段階では、せいぜい購入済みの情報商材の使い方などに関して相談をする意思しか有しておらず、電話で勧誘された別の情報商材の契約の申込みをし又は締結をする意思を有していなかったことは明らかです。
さらに、特定商取引法第26条第7項第1号は、適用除外の例外として「政令で定める行為により請求した者」と規定しており、同号を受けて特定商取引法施行令第9条(令和5年6月1日以降は第19条)は「電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは電磁的方法により、若しくはビラ若しくはパンフレットを配布し、又は広告を新聞、雑誌その他の刊行物に掲載し、若しくはラジオ放送、テレビジョン放送若しくはウェブページ等を利用して、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけることを請求させる行為」と規定しています。設問の事例のような場合、SNSのやり取りにおいて、事業者が契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけることを請求させる行為をしたといえる のであれば、特定商取引法施行令第9条(令和5年6月1日以降は第19条)に該当する場合もあると考えられます。
このように、①消費者が「当該契約」の申込み若しくは締結を行うために電話をかけることについて明確な意思表示をしたといえない又は②事業者による特定商取引法施行令第9条(令和5年6月1日以降は第19条)で定める行為により電話をかけることを請求したといえるのであれば、適用除外の対象とはならないと考えられます。そのため、電話勧誘販売の規制が適用され、クーリング・オフの規定が適用されると考えられます。


(注)Q&Aは、想定される事例における考え方を示したものです。具体的な事案においては、Q&Aにおける考え方を、その事案における事実に即して御活用ください。